カモメになったペンギン

カモメになったペンギン

「チーズはどこへ消えた」風の寓話形式のビジネス書です。著者はハーバードビジネススクールの教授であり、「リーダーシップ論」や「企業変革論」などの専門著書もあるコッター氏。「変革プロセスをいかに成功させるか」という論文をベースに作られた寓話なのですが、とても興味深く読みました。
現在のビジネスにおいては、変革はますます重要なものになっているのですが、何か物事を変えようとしても失敗したり、うまくいったとしても当初想定したとおりにならなかったりする確率は90%もあるのだとか。世の中上手く行かないってやつです。でもそうならないためには、必ずあるプロセスが必要なのだとこの本は説きます。
この本では、ペンギンたちの暮らしていた氷山にヒビが入り、多分冬を越せないだろうという重大な危機にどのようにペンギンたちが対処するかという話でそれをうまく説明していきます。
最初に、氷山の危機に気づいたペンギンはフレッドただ一人(羽?)。彼は群れのみんなに危機を訴えますが、悲しいことに彼はただの一般人。周りのみんなは相手にしません。このままでは氷山がくずれて大惨事になってしまう!どうすればいいのか!?

  1. 危機意識を高める
  2. 推進チームをつくる(それぞれリーダーシップ・信頼性・コミュニケーション・専門的知識・分析力・危機意識に優れたメンバーが望ましい)
  3. ビジョンと戦略をたてる
  4. ビジョンを周知する
  5. メンバーが行動しやすい環境を整える
  6. 短期的な成果を生む
  7. さらなる変革を進める
  8. 新しいやり方を文化として根づかせる

なるほどなぁ。いろいろ勉強になるなぁ。自分の仕事にも大いに生かせそうだ。
ふと思ったのですが、出版業界においては、何年も何年もずっと危機が叫ばれ続けていながら、いまだにいつ崩れるかわからない危険な氷山の上にずっと暮らしているペンギンたちさながら、何ら変革できていないという現実があるんですが、結果を出せないのは結局このプロセスを踏んでないからなんじゃないの?という気がしてきました。
危機意識は流石にみんなもう持ってると思うのですが、2番目のプロジェクトチームがないように思えます。個々の企業単位ではやってそうだけど、出版界全体という話になるとどうなんでしょうか。そうした活動を業界の垣根を越えてやってらっしゃる方たちもおそらくいらっしゃるのでしょうが、明確なビジョンと戦略はあるのでしょうか?あるのかもしれないけど、少なくとも私が知らないということは、それは周知されてないんじゃないでしょうか?
なんか色々考えてしまいました。評価B+