創刊の社会史

創刊の社会史 (ちくま新書)

創刊の社会史 (ちくま新書)

もしも雑誌が100人の村だったら、その住民のうち39人は10歳以下であり、20歳以下と考えるとその数は57名に達し、30歳以下では70名にまで及ぶ。この村で無事還暦を迎えられたのは、5名にも満たない。

ということで、生まれてはすぐ消える日本の雑誌の世界を、丹念に丹念に追いかけてレポートしたのがこの本。基本的にファッション誌の話しかしていないのですが、それでもここに出てくる雑誌のタイトル数が半端ではなく、どれだけこの人雑誌読んでるんだ、と舌を巻きます。

他にも『GETON!』からは「GETON!forGirls」として「ストリート発!オシャレ元気な女の子の「MIXスタイルマガジン」『BRANKEY』が00年に創刊され、またこの年『Ollie』から「ストリートカルチャーマガジン」『OLLIEGIRLS』が、01年には『asayan』からは「asayangirls」『TC』が、『WOOFIN’』からは、『WOOFIN’GIRLS』が派生している。そして06年には、今度は『samurai magazine』増刊として「ストリートの女のコのためのモテ系ファッション・マガジン」『nadesico』が「『サムライマガジン』の女のコ版、デビュー」している。

こんな文章が、全編にわたってわんさか出てくるのですが、この固有名詞羅列の文章を一般の人は、どれだけ理解できるのでしょうか。書店員の私ですら「見たことないんで、イメージできないんですけど」という雑誌が、実はちらほら出てきます。
まあ、それだけものすごく資料を網羅しているだけあって、風俗史の一研究ジャンルとして、雑誌の創刊と廃刊をとらえるという意味では、非常に説得力のある本でした。メディア論というより、完全に社会風俗史ですね、これは。
社会風俗史ということで、書店という現場ではビジネスに生かすのは難しそう。でもファッション誌を作っている人には参考になるんじゃないかと思います。これだけ休刊が相次いでいますから、雑誌の創刊というのは、相当なリスクを覚悟してやらないとダメだとは思いますが。
書店員的に面白かったのは、P202にあった表でしょうか。過去15年間の年代別性別で、読んでいる雑誌のランキング変遷がわかるのです。たとえば小学6年生女子の読んでいる雑誌ランキング2006年1位は「ちゃお」なんですが、「ちゃお」は2002年までは1位ではなく、1998年当時は5位で、その頃はずっと「りぼん」が1位を独走していたのです。でも「りぼん」は2002年に「ちゃお」に首位を明け渡し、2006年には「なかよし」にまで抜かれてしまう、みたいな歴史がよくわかります。普段、書店店頭では雑誌の栄枯盛衰を肌で感じることはあっても、こんな風にわざわざ時系列に並べることは滅多にないので、面白かったです。