ラーメン屋VSマクドナルド

ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層 (新潮新書)

ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層 (新潮新書)

アメリカで暮らす著者が、時折遭遇する「日本の常識が通用しない」事態は、どういう文化的背景があって、発生するのだろうか、ということを鋭く考察した本。
アメリカで車を購入したときに、顧客満足度調査アンケートに協力したときの話。「素晴らしい(Excellent)」「とても良い(Very Good)」「良い(Good)」「普通(Fair)」「不満足(Unsatisfactory)」の5段階評価で選んでくださいとあったので、普通に満足していた著者は「とても良い」と「良い」を中心に、時々「素晴らしい」を混ぜて回答したという。ところが、そうしたところ回答後に販売店の営業担当から電話がかかってくるのだ。

「買った車に何か問題がありましたか?」
「問題ないよ。新しい車を楽しんでいるよ」
「それじゃ、満足度調査でどうしてあんなに悪い評価をくれたのですか?」
「悪い評価なんてしてないよ。概ね「とても良い」と「良い」で答えたよ」
「あんた!そりゃひどいスコアってことだよ!」

日本人ならよほど感動した時でもなければExcellentなんて言わないが、アメリカではExcellent以外は「問題あり」という意味になるらしい。
このことから著者は、アメリカの「褒める」文化と、日本の「褒めない」文化の違いを見てとり、さらに論を発展させる。
アメリカ人の場合、リーダーはポジティブ表現を多用する。大統領は「希望」と「自由」を語るのだ。こうすれば未来はもっと明るくなる、だからこうしようという「希望駆動型」だ。
日本人は逆。「危機」や「崩壊」というネガティブな表現を多用する。このままじゃ危ない。危機感が足りないぞお前、こうしないと崩壊するからこうしなければ!とこうなる。「こうすればバラ色の出版業界になります」と言うよりも「出版業界もこのままだと崩壊してしまう、このままじゃダメだ」というほうが、日本人には響くということなのだ。日本人は「危機感駆動型」だと言える。確かにそうかも。
しかしその割には日本人は危機管理が甘いのは、なぜなのか。さらに分析を進める著者。
この本は、こういう話が満載で興味深い。表題になっているラーメン屋VSマクドナルドの話も興味深かったが、アメリカ人がディベート(会話する)文化なのに対して、日本人はブログを書く(モノを書く)文化であるという指摘する話など、特に興味深かった。こういうのが好きな方にはオススメ。
評価 Excellent!(アメリカ人風に)