ヘヴン

ヘヴン

ヘヴン

[BOOKデータベースより]
「僕とコジマの友情は永遠に続くはずだった。もし彼らが僕たちを放っておいてくれたなら―」驚愕と衝撃、圧倒的感動。涙がとめどなく流れる―。善悪の根源を問う、著者初の長篇小説。

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 いじめを扱った作品です。私自身はいじめた経験もいじめられた経験もなかったからか、そこまで心にググっと来るものはなかったですね。私が思うにいじめられる側って、何か原因があっていじめられているんだと思ってたんですが、この作品では、別にそういう理由は無くて、ターゲットになったら何の理由も無くいじめられるのであって、たとえそれが解決されたとしても、いじめられることには変わらないみたいなことが書いてあって、それについてはそうだったのか、とびっくりしました。それにしてもいじめって、もっとお互いの感情とかがすごいもっとぶつかるもんじゃないのかなあ、いじめられるほうも、この「ヘヴン」って、淡々といじめられてるみたいな感じなんですね。何かすごいキレイな感じなんです。何か、もっと何か、もっと・・・
 もっとやれ!と?「人間サッカー」とか生ぬるいんじゃないの?と(笑)
 いやいや(笑)、人間サッカーはひどいと思うんですけど、ただやられてるのがキレイに描かれすぎて、私だったらどう思うだろうとか、こうやったらいいのにとか考えるまで行かない。帯の書評とかを見たら「心打たれる作品」とか書いてありますけど、悪くは無いのですがそこまでは・・・かなあと。
 これね、私は全くわからないです。何がいいのか?何に心を打たれるのか?全く理解できない。単に私に読解力がないだけなのか、著者と全く感性が合わないだけなのかもしれませんけど。
 嫌な話なんですけど、もっと嫌悪感をかきたてられるような感じがもっとあってもよかったのかなあと。
 いじめのことを淡々と書いていることについては、別にいいと思うんです。ただ、元いじめられっ子としては、こんな普通のいじめに衝撃を受けている人がたくさんいるということのほうが、衝撃的です。百瀬君が「いじめに理由は無い」って言うじゃないですか、あれもウソですからね。いじめっ子がいじめられっ子に、本当の理由なんて面倒くさくて説明なんかするわけが無いじゃないですか。まずそこから理解しないと。真に受けてはダメです。いじめられる側には原因があるんですよ、必ず。
 あー、なるほどー。
 もちろん、だからと言って、それでいじめる、というのは別次元の話で全く共感できないですけどね。ただ、この作品はいじめられる側もいじめられる側でそれを淡々と受け入れるじゃないですか。ヒロインにいたっては、いじめられている私たちこそがむしろ偉いんだ、いじめさせてやってるんだみたいに上から目線の発想に劣等感を逆転させてしまっている。これも共感できません。お互いがお互いを見下しているという構図で、どっちもどっち。未来もありません。著者の川上未映子さんは、多分、そういうのも分かってて書いていると思う。それは伝わってくる。でも、そのメッセージというかテーマには正直共感できないし、心を打たれるというのは、もっと理解できない。個人的には、主人公たちが努力していじめられないようになる話のほうが好きですね。「野ブタをプロデュース」とか。

評者 評価 予想
chakichaki D ×
maruruu B+