キンドルの衝撃

キンドルの衝撃

キンドルの衝撃

キンドルが発売されることによって、紙媒体のマスメディア業界は、グーテンベルク以来の革命期を迎えようとしている、という本です。
ただ、この本を読めばわかるのですが、内容の半分以上がアメリカの新聞業界の話でして、ネット戦略を誤った新聞業界が苦戦し、kindleをはじめとした電子書籍端末に活路を求めようとしている、という話がメインになります。出版業界の電子書籍がどうのこうのという話はあまり出てきません。
これを読むと何だかkindleが成功しているのも、それが新聞の宅配にかわるサービスだったから、というのがとても大きいように感じます。少なくともそれが最初期に普及した要因の一つではあることは間違いないでしょう。kindleのユーザーって、本を読むよりも新聞読むのが目的で購入している人が多いのかもしれません。そうした情報も含め、電子書籍の未来を考える上で、いろいろ考えるさせられる本でしたね。
本書の中で、気になった箇所をいくつかメモ引用。まずはジェフ・ベゾスの顧客志向についてのコメント。

「企業は顧客のニーズに的を絞るのではなく、スキル(技術)に焦点を合わせてしまう。新分野に進出しようとすれば、その領域でスキルを持っていないのに、なぜ進出するかという質問が発せられる。つまりこのようなアプローチでは企業の寿命が限られてしまう。なぜなら世界は変わり、最先端だったスキルをもはや顧客が必要としなくなるからだ。安定した戦略は、わが社の顧客は何を必要としているかという問いから出発して、その次に我々にはどんなスキルが欠如しているかを検討することだ。キンドルが好例になる。もし顧客のニーズではなく手持ちのスキルで何ができるかと考えていたら、キンドルは実現していなかっただろう」

ベテランジャーナリスト、スティーブン・ブリルの広告業界向けの会議でのスピーチ。

今から5年、10年あるいは15年後になるかもしれないが、新聞はほぼ完全にネットかキンドルiPhoneのような端末で読むことになっているだろう。ほぼというのは、徐々に転換するからだ。新聞の印刷版は週に1回休刊になり、それが週2回そして週5回に増え、日曜版だけが発行されるようになるだろう。その時にウェブ版(および電子版)の有料読者がいなければ、新聞社は必ず破産する―中略―だが、この転換期に電子版コンテンツにお金を払う読者がいれば、結果的に(印刷版より)ベターなビジネスモデルが構築されるかもしれない。新聞の印刷コストはゼロになり、課金が収入源として定着し、さらに以前ほどにはないにしてもネット広告からの収入も期待できる。

電子書籍端末「スキッフ」を開発したフックスバーグ社長へのインタビュー。

―なぜパソコンは、E・リーディングの主役になれないのか?
ノートブック型パソコンやスマートフォンなどは、多目的デバイスなので、読むことは数多い機能の1つでしかない。読書用にパソコンや携帯電話を買う人はいないだろう。これらのデバイスで読書をしても、素晴らしい体験にならない。所詮読むことは主目的ではないので、読書に没頭するような体験はできないだろう。出版社サイドからすれば、多目的デバイスというカテゴリーでマネタイズする方法が未だに発見されていない。