れんげ野原のまんなかで (創元推理文庫)

れんげ野原のまんなかで (創元推理文庫)

図書館の司書が活躍する話を、最近読んでいます。これはそのうちの一冊。
秋庭図書館という図書館を舞台にしたミステリ小説。主人公は新米司書の文子さんで、探偵役は先輩司書の能勢さん。
本を題材にしたミステリというよりも、たまたま事件の舞台が図書館でした、的な話が多いので、ちょっと肩透かしを食らった気分になりましたが、随所に挟まれる図書館司書のお仕事豆知識がなかなか面白いです。

NDCという図書館独特の分類方法は森羅万象を扱うこの世のすべての図書を、まず十種類に分類するところから始める。(中略)文子の指導教官は目に映る事象はすべて、反射的にNDCのコードとなって脳に認知されると豪語していた(スズメは488.99、その足の下の電柱は547.22、そこについている霜は451.63…

すごいな図書館員!あらゆるものを見た瞬間にNDCコードに脳内変換する能力があるとは驚きです。ちょっと尊敬しました。

「秋庭市に書店が何軒あるか、知ってます?でも、失礼ながらどこも似たり寄ったり、文庫本と雑誌だけでスペースの大半は占められているようなお店ばかり。話題の新刊書も、一週間たったら返品されてしまう」
「図書館は違う。本を手放さない。売れようが売れまいが、わたしたちはそんなことを基準に選ばない。選ぶ基準はただ一つ、うちの図書館にふさわしい出来かどうか、それだけ」

ただ小説内の一登場人物の発言とはいえ、日野さんという図書館司書の、この新刊書店に対する発言についてはいただけないなと思いましたね。売れるか売れないかを「そんなこと」扱いしているのはちょっとね。どんな本であれ、本を買うという行為を馬鹿にするんじゃないよ、と。
ところで、最終章で『床下の小人たち』が重要な作品として登場するんですが、これが書かれたのはまだ『借り暮らしのアリエッティ』の公開前なんですよね。映画実は観ていないのですが、ちょっと原作読んでみたくなりました。