おさがしの本は

おさがしの本は (光文社文庫)

おさがしの本は (光文社文庫)

こちらも図書館司書が主人公のビブリオミステリ。例によってレファレンスサービスに来る問い合わせを解決していくという感じの話ですが、全部本に絡むミステリになっているのがいいですね。最初の森林太郎の話は何となくオチも読めたのですが、最後のほうに登場する「ハヤカワの本」の正体はさすがにわからなかった、というか、難易度高い気がします。
でもこの作品が図書館ミステリとして非常にすばらしいな、と思うのは、ミステリとしてではなく「図書館そのものの存在意義」がテーマになっているところなんです。
主人公が勤める図書館を運営するN市は、行政予算が火の車になっていて、図書館なんかに予算を配分してる場合じゃないだろ、という状態になっています。そんなとき新しく図書館廃止派の切れ者が図書館の館長として赴任してきます。実はこの館長、図書館廃止派なのに現役司書である主人公よりもずっと本に詳しいというおそるべき実力者。
主人公は、この切れ者館長をむこうに回して図書館存続を勝ち取るべく、さまざまな難題に挑むのですが…。
終盤、主人公がN市の市議会で図書館の必要性を演説するシーンがこの作品のハイライト。このくだりは多くの人にぜひ読んでもらいたいですね。