しあわせの書

しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)

しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫)

先日書店で猛烈にプッシュされているのを見て購入。初版が昭和62年なのだが、現在18刷とロングセラーバリバリ現役のミステリ小説である。
読んでみると、結構シンプルでコミカルなストーリー展開だ。主人公のヨギガンジーは、胡散臭い心霊術の実演やその暴露をなりわいにしている正体不明の外国人。ひょんなことがきっかけで、とある新興宗教のお家騒動に巻き込まれてしまう。なぜか無関係のガンジー先生が、教祖様の跡継ぎを決める儀式を取り仕切ることになってしまったのだ。しかし、そこには恐ろしい陰謀が企てられていたのだった!
って、まるで『トリック』の原作を読んでいるかのような世界観である。最後は全部まるっとお見通しだ!ってなるので、どんでん返し系のミステリではないし、結構普通の謎解きミステリなのだ。
さて。では何故、一見普通のこのミステリが、いまだに売れ続けるほど人気なのか。
実はこの作品自体に、ある驚きのトリックが仕掛けられている。
したがって登場人物だけにではなく、この本の読者全員にもトリックが仕掛けられ、その謎解きが裏テーマになっているのである。
そのトリックが凄いのだ。未読の方には絶対に明かすことができないのだが、読み終わったら間違いなく、いろんな意味で作者に拍手喝采(もしくは愕然と)したくなることであろう。
ちなみにちょっとだけヒントその1、本作品は新潮文庫の書き下ろし作品であり、単行本では刊行されていない。その2、解説は松田道弘氏である。その3、1ページ目時点ではまだあなたは騙されていない。これだけのヒントでわかったら凄いけどな。
まあ、この作品に類似したトリックを使った作品は、見たことがないので、これは唯一無二の怪作ではないかと思う。その衝撃のトリックを、あなたも体験してみませんか?