ふるほん文庫やさん
北九州の小倉に、世界最大の文庫の専門店があるという話は前から知っていたのですが、先月たまたま「行ってきましたよ!あそこは本好きのための魔窟ですよ!」という興奮の体験レポートメールをいただき、私も無性に行きたくなってしまいました。たまたま九州に行く用事があったので小倉に寄ることにします。
このふるほん文庫やさんですが、もともとはネットの専門店でバーチャルな店舗でしかなかったのですが、品揃えを極めていくうちについに在庫50万冊となり「50万冊という在庫量をぜひこの目で見てみたい」という人が増えてきたので一般客に公開することにしたのだとか。
小倉駅からバスにゆられて20分、バス停からちょっと路地に入ったところに世界最大の文庫やさんがひっそりとたっていました。元パナソニックの工場だったところをそのまま使用しているので、見た目はどこからどうみても倉庫です。引き戸を開けて中に入ると、受付のスタッフの方に「初めての方ですか?」とたずねられ、ふるほん文庫やさんの値付けルールを書かれた紙を渡されます。価格は、流通品か絶版か、出版社などによって細かく規定されていて12段階に分類されていますが、どんな稀少本でも最高設定価格が1280円までなので、良心的といえば良心的です。それにしてもブックオフと違って、相当な商品知識がないと値づけは難しそうです。
売場(というか倉庫)に通していただきました。普段は照明がついていないらしく、私のために電気をつけてもらいます。倉庫は2階建てになっていて、書架が延々と並んでいます。総段数8300段!「このへんが新潮文庫、このへんが角川、2階に旺文社とか岩波があるよー」と教えてくれたのですが、在庫が膨大で整理しきれていないため、大体このへんにかたまっている、というレベルの整理状況です。お目当ての本を初めての人が探し出すのは、難しいかもしれません。私も欲しかった本を自力で探し出すことは不可能で、スタッフの方に探していただくことになりました。タイトルを言うと即座に「あぁ新潮文庫のやつだね。」と言って新潮文庫の棚を探してくれたのですが、そこには存在せず、5分ほどかけてどこかの未整理棚から引っ張り出してくれました。すげー。諦めかけてたのでうれしくて涙が出そうになりました。
ちなみにこの倉庫ですが、冷暖房は全くないので、夏と冬は結構つらいかもしれません。385坪もあって、奥の方に行くといくつも小部屋があり、照明すらついてないところもあって、確かに魔窟。一般客には開放されていない場所もあるのですが、そこには巻数ものの未揃いものや、上下巻の下しかないものばかり集まった部屋があるのだそうです。1時間半ほど倉庫内をうろうろして絶版本を2冊購入しました。
私のように訪問してくる人はあまりいないらしく、オーナーの谷口代表からいろんなお話をお聞きすることが出来ました。非常にエネルギッシュな方です。
「年間1000万円の家賃が発生するリスクをとってでも、在庫50万冊を全部開架するという夢を実現したくて、ここに引っ越してきましたんですよ」
「従業員は今8人でやってます。年中無休です。お正月も今ここにいる3人はいますよ」
「とにかく在庫量が膨大で人手が足らないんです。でもただ人手がいてもいいっていうわけじゃなくてね。知識がないとやっていけないんです。この世界に10年はいないとここじゃ通用しないかな。1年2年じゃ話にならない。新刊書店の人はいいですよ。たかが、と言っては失礼ですが、市場流通在庫の3万点を覚えるだけでいいのですから。」
うひー。すみません、そんなに覚えてません。
「今はホット在庫化に注力しています。おかげさまで東京堂書店や紀伊国屋書店と提携することができ、とても好評です。」
ああ、そういえば紀伊国屋の札幌本店でふるほん文庫やさんフェアやってましたね。常設もやってるんですか。新刊書店で古本売るといろいろなところがうるさくないんですか?
「うちは絶版かどうかすべて管理していますから、絶版本だけであれば何の問題もありません」
そっか。問題視されているのは新古書店のほうでした。これは愚問でしたね。すみません。
勝手が異なる古本業界のことはよくわからないのですが、アマゾンが参入したりネットでの競合が大きくなってきて大変なようです。
http://www.bunkoyasan.jp/column/index2.html#3
に谷口代表のふるほん文庫やさんにかける情熱というか「魂」を感じることができます。給料3万って・・・、頭が下がる思いです。がんばっていただきたいし、何か私でも貢献できることがあればいいのですが、と思いながら筆をおきます。