キューブリック
エスクァイアで今、都築響一氏が全国の個性派書店を訪ねる、という連載をやっているのですが、その栄えある題1回目の書店に選ばれたのがこの「キューブリック」なのでした(2回目はフタバのMEGAです)。私が訪問することにしたのは奇しくもその記事が掲載されたエスクァイア12月号の発売日。さてどんな店なのでしょうか?
福岡天神から今泉大名と通って西に続くけやき通りに面したわずか13坪の小さなお店です。ここは福岡の中でも少し上流感の漂っているエリアで、青山や表参道界隈の雰囲気とよく似ています。散歩コースとして人気なのもうなずけます。書店は「立地が8割」と言われますが、本当にいい場所に出店したものです。このエリアは人口も多く、しかも全国平均と比べて圧倒的に20〜30代の一人世帯が多いアンテナ感度の高い街なのです。
店内にはいってみましょう。13坪のお店なのでどこに何があるかは入口からすべて見通すことが出来ます。このお店にはコミックや学習参考書は置いていません。品揃えはとても上品。店内の雰囲気もどこかしら上品です。そして棚はには必ずオシャレな面陳棚があって、「これは!」という本がさりげなくプッシュされています。
このセレクションが絶妙!わずかしかない売場なのに欲しい本がいっぱい見つかってしまうのです。すごい!この品揃えの秘密は何なのでしょうか?よく見ると棚の本にはすべてスリップが2枚挟まっています。えーと、これはトーハンの電算スリップですね。すべてのスリップに注文日が表記されています。そう、このキューブリックでは新刊配本を止めて注文したものだけを店頭に並べているんです。したがってお店の主人が売りたいと思って単品で注文を出した本しか店頭に並んでいないというわけ。店のすべての在庫タイトルにご主人の目が行き届いているわけです。しかも高いレベルで管理されているらしく、スリップの日付にほとんど古いものがありません。レジもちゃんと単品管理されたWEBPOSを使用しています。
いやーすばらしいですね。文庫なんかわずか3スパンしかないような小さなお店なのに私は45分も長居してしまいました。3冊購入。こういうお店を見ると、本来の本屋さんの仕事というか役割というか、ひょっとしたら私がやりたかった店、やらないといけない店というのはこういうお店なんじゃないのか?とハッとさせられます。最近の書店はどんどん大型化が進んでいますが、一冊一冊愛情を込めて本を仕入れてお客様に届ける、っていう本来忘れてはいけない部分が抜け落ちてしまっているかもしれません。システムで自動的に内容も知らないような本が勝手に入荷して知らないうちに売れちゃってるみたいな店、そんな店がほとんどなんじゃないでしょうか?
このお店は売上げも好調なのだそうです。初心忘れるべからず。勉強になりました。総合評価90点