幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)

幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)

怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道 (集英社文庫)

怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道 (集英社文庫)

高野秀行氏のデビュー作と文庫最新刊を読んでみました。この方は、早稲田の探検部出身で、在学中アフリカのコンゴの奥地の湖に生息しているというムベンベという怪獣を探検隊を率いて探しにいった人なんですが、前者はその探検記です。後者は、その後およそ二十年たって、インドで見つかった幻の魚ウモッカを探しにいくときの話です。いまどき、大長編ドラえもんのような無謀な冒険を、四次元ポケット無しでやっているというのは、それだけでも驚嘆に値しますが、それに高野氏や周囲のキャラクターの面白さが拍車をかけて、まさにありえない面白さを演出してくれます。
私は冒険旅行記の面白さの要素は、冒険する土地や人、つまり題材である冒険そのものの面白さが第一だとこれまで思っていたんですが、考えを改めました。文章や構成力という、その旅行をいかに面白く伝えるか、という点も非常に重要だったんですね。旅行そのものは絶対にムベンベを探しにいったコンゴ探検のほうがすごい、と読んだ人全員がそう言うと思いますが、実は今回読み比べてみて、私はウモッカのほうが面白かったのです。こんな旅行記、まじであり得ない、と思いました。旅行記としては、松坂のジャイロボールぐらいの変化球だと思いますが、こんなに面白い旅行記にはそうそう出会えません。
なお、ムベンベのほうは解説が宮部みゆきさん、ウモッカのほうは荻原浩さんが書いています。私も最近人に薦めまくっています。