絶滅危惧種になりつつあるエロ本

出版奈落の断末魔―エロ漫画の黄金時代

出版奈落の断末魔―エロ漫画の黄金時代

BRUTUSが「大人のマンガ」特集ということで、本日は便乗して「大人(18禁)のマンガ」について書きます。(え?ちがうって?)
エロ漫画と言ってもエロ漫画業界について書かれた本のご紹介。エロ漫画業界といえば、ゴージャス宝田の「キャノン先生トばしすぎ」が、業界マンガ兼エロ漫画として名作ですが、そのエロ漫画業界の編プロで編集を何十年もやっているこの道のプロ中のプロである塩山さんが、エロ漫画業界を振り返って解説したのがこの本。この業界の酸いも甘いも知り尽くしているので、業界最底辺と自嘲するエロ漫画業界に棲息する様々な人種を、異様な迫力でバッタバッタとこき下ろしていく様に圧倒されます。編集者がいかに姑息な手段で稼いでいるか、エロ漫画を生業にする漫画家がいかに社会不適合の変人であるか、それを取り締まる当局の官僚的理不尽さがいかにひどいか、いつも泣きをみる写植製版印刷業者がいかにかわいそうか。読んでいて全然愉快な気持ちにはなれやしないのですが、出版業界は、こういう世界にも支えられているのだなということは、忘れてはいけないでしょう。菜摘ひかるのカリスマ投稿者時代のエピソードや、一流のセンスでメジャー化していったいがらしみきお、など多くの著名人が実名で登場してくるのも面白いです。
このエロ漫画業界も大変厳しいらしく、211ページに10年前の収入と今の収入を月別に比較した表がでてくるのですが、驚くほど激減していて、これ生活できるんですか?というレベルになっています。そういえばエロ本編集者は、もう絶滅寸前だなんて記事(http://www.cyzo.com/2009/03/post_1615.html)がサイゾーにも載っていたことを思いだしました。産業としてだけでなく、もはや文化としてのエロ本も絶滅寸前のようです。
かつてのエロ本の持っていた強烈な世界は、今は同人誌とかDVDとか怪しげなサイトとかそっちのほうにいってしまい、今書店で入手できるのは、単なるDVDの広告宣伝用プロモーションパンフとしてのエロ雑誌や、エロ漫画になってきてしまっているということなのかもしれません。そりゃ衰退するわな。