[書店]PAGEONE

chakichaki2006-08-02

誠品書店で有名な台北に「誠品とは別に、すごい本屋が出来たらしいよ」と聞いたのは2年前でした。写真を見せてもらうと、確かにこれはものすごい。こんな斬新なデザインの書店は見たことがありません。この書店の名前はページワン。東南アジアを中心に国際的な出店をおこなっていて香港ではすでに洋書のトップシェアを奪ってしまったアジア新興のチェーン店です。本社はシンガポールにあり、アート・デザイン系の出版事業やホルセール事業もやっています。当然小売部門でも一番強いのはアート&デザイン関係。この店自体も一つのデザインアートに思えるぐらいデザインにはこだわっているようですね。台北特集の第二回目は、このPAGEONEの台北店のレポートを送ります。
さて、台北の副都心である信義地区に、2006年8月現在、世界一高いビルが建っているのですが、「台北101」と呼ばれるその101階建てのビルの4階にこの書店があります。世界最速の三菱製エレベーターに乗って、このビルの展望台を見学に行ってもいいのですが、入場料が高い割には、上にあがってもアイスクリームを食うぐらいしかやることがないので、4階にとどまってPAGEONEで時間をつぶしたほうがはるかに有意義であると保証できます。とにかく入ってみましょう。

まず入口入ったところの写真がこれ。入口まわりには、雑誌および新刊の平台が置かれています。平台はギザギザと波打っている、いわゆるノコギリ型平台が置かれています。
「適当に作っているように見えますが、ちゃんと本の大きさや見える角度を計算して、作ってあります」
ふむふむなるほど。新刊は20%OFFになってますね。
「フロント(※新刊のこと)については、どこでも売っているわけですから、はじめからディスカウントします。収益的には、バックリスト(※基本定番在庫のこと)で稼ぎます。フロントは必ずなくてはならないものですが、客寄せにすぎなくて、収支的にもトントンです。」
返品はできないんですか?
「台湾の本は返品可能です。洋書も15%ぐらいは返品可能ですね。」
結構、洋書が多いですね。
ページワンは洋書の専門店ですからね。仕入は直仕入です。流通が複雑なので説明が難しいですが、今ページワンでは、どこから仕入れれば一番安く仕入れられるかを、タイトルごとに細かく見てから発注しています。どこに発注するかはケースバイケースになります。効率的ではありませんが、それによって扱い量が少なくても、プロフィットは大体45%ぐらい確保できるんですよ。ただしリストプライスに対して5%マークアップしてますけど」
メッチャ儲かるじゃないですか。
「でも洋書が売れるようになるまでには、時間が結構かかりますからね。」

この店はなんでこんなデザインなんですか?
ページワン代表のマーク・タンの弟にケニー・タンというのがいるんですが、彼がコンセプトをデザインしたんです。この店のコンセプトは『山水画』です」
ケニー・タン氏は、日本でも札幌の紀伊国屋書店をデザインをやっていますね。山水画というのは?
「あの青いところが空と水ですね。天井の白い部分は雲です。什器の棚が、山の連なりを表現しています。棚がデコボコしていたり、わざと間を抜いた棚を作ったり、迷路のような棚配置にしていますが、すべて東洋的な山水画の世界を空間に表現しようとしたものです。」
非常に変化に富んだ面白い空間になっていると思います。照明も蛍光灯が一つも見えませんね。
「全部間接照明ですね。例えば台北紀伊国屋もそうですけど、日本の書店は蛍光灯が天井にズラっと並びますよね。あれはあまりいい見栄えではありません。この店はそういうところにはこだわっています。ただしデザインだけではなく、機能性も追求しています。例えば、この上下に分離した壁面什器ですが、ちょうど本を立ち読みしようとしたときに、この空いているスペースに本を置くと丁度いい高さになるように設計しています。」
このスチール什器の表面の木パネルは竹で出来ていて手触りがとてもいいのですが、内装費とかかかってるんじゃないですか?
「今は坪20万ぐらい使っています。将来的には15〜6万にしたいんですけどね。中国ならこれの10分の1でできますよ」

日本には出店する予定はないんですか?
「いつかは出店したいと思いますが、優先順位としては、今一番伸びている中国が先です。中国は、繁体字の本と簡体字の2種類あるのですが、簡体字のほうの流通がひどくて先にこれをなんとかして地盤を固めたいですね。」
流通がひどいというと?
「例えば、大陸では同じISBNコードがついている本が何冊もあるわけです。要はISBNコード取得にコストがかかるから、同じISBNで内部コードだけ変えてバンバン出版しちゃうというのが当たり前になっているわけなんですね。苦労しましたがシステム的にはそれでも単品管理できるようなシステムを開発したので今は対応が可能になっています」
東京や大阪でこんな店があったらすごいと思いますよ。
「日本はある意味閉鎖された商圏なので、出せれば面白いですが、コストがかかりますので優先順位は低めです。」
最後に、誠品についてどう思いますか?
「功罪相半ですかね。台湾に書店文化を根付かせたということは評価に値します。でも座り読みとかはね、本のことを考えると本が痛みますから、それはどうかな、と」
ありがとうございました。うーむ、世界規模の出店計画とはスケールのでかい書店だなぁ…。この店に関してはデザインセンスで言うと超一流だと思いますが、ちょっと高尚すぎて私のような下流社会民には親しめない感じがするなぁ。カフェとかもあるんですけどね。まぁ、とにかく世界の書店の中でも特筆されるべき書店の一つではありましょう。台北に行く際は、見に行っても損はありません。総合評価90点。