単純な脳、複雑な「私」

単純な脳、複雑な「私」

単純な脳、複雑な「私」

これの前作にあたる「進化しすぎた脳」のときにも絶賛させていただきましたが、この本も絶賛させていただきたいと思います。
気鋭の脳研究者が、高校生に脳科学の最前線を講義したものを実況中継!という形式は前回と変わらないのですが、この5年でそんなに脳の研究は進化しているのか!という驚きと、そしてその驚異的な内容には、知的興奮をおさえられません。内容も盛りだくさんすぎて、これ読んだらMR.BRAINのネタ3クール分ぐらいは書けそう。
忘れないように個人的に面白かった内容を箇条書きでメモっておきます。多分メモだけ読んでも何のことやらと思いますので、ご興味のある方はぜひ本のほうをお読みになってください。評価A
【第一章】
・縦と横の長さは、縦が大きく見える。
MRIでの嘘発見技術は非常に高く、インドでは法廷に証拠として採用されている
・人間は「ゲシュタルト群化原理」が発達している→早とちりする能力
・人間は顔の左半分しか見ていない。
・人間には意識と無意識があるが、意識は無意識によって操作されており、意識はそれに気がついていない。
・意識は、無意識によって選択した行動の理由を、あとづけで説明しようとする(錯誤帰属)
サブリミナル効果は、本当。人間は意識の外側で無意識に情報を処理しているため、意識していない情報に左右されている。(勘が正しい理由)
・「ブーバ・キキ試験」…直感でほぼ全員(98%)が正解できるが、なぜその答えになるのかと聞かれても誰も答えられないテスト(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%BC%E3%83%90/%E3%82%AD%E3%82%AD%E5%8A%B9%E6%9E%9C
・直感をつかさどる脳の部位は「基底核」(→覚えるのに時間がかかるが、絶対に計算ミスをしない脳の部位。箸を操る行為・自転車に乗るなど)

【第二章】
・上下が逆になる逆さメガネをかけても、人間は数日で順応してしまう(そもそも目の構造からして人間は倒立した世界を受像している)
・「ラ」の音しか聞かせないで育てたネズミは、「ラ」の音以外は聞き取れなくなってしまう。
・縦ジマしかない部屋で育てたネコは、縦ジマしか見えず、横ジマが見えなくなる(足元に棒を置くとこける)
・人の好みも操作されている
・「見覚えがある」は当てにならない(デジャヴュは、適当)
・「がんばれ」の効果は絶大
・単調な作業を時給2000円でやってもらったAグループと時給100円でやってもらったBグループに「あの作業は楽しかったですか?」と聞くと、楽しかったと答えるのはBグループ。
・左脳に「言語野」がある。
・右脳に「ペン」という文字を見せても本人の意識では「ペン」と判断できないが、無意識では「ペン」であると理解できる
・右脳に「笑え」と示すと、意識はできないが、無意識で笑ってくれる。そこで「なぜ笑ったのですか?」と聞くと「だって、あなたが面白いことを言うから」と答える。(理由のあとづけ「作話」)
・心に痛みを感じたときと、身体的な痛みを感じる部位は同じ。
頭頂葉後頭葉の境目にある角回という部位を刺激すると、背後霊と強烈な恐怖を感じる。右脳の角回を刺激すると幽体離脱したように感じる。(現在の脳科学ではいつでも幽体離脱現象を人工的におこせるようになっているとのこと!すごい!)
【第三章】
ニューロンが仮に1000億個だった場合(確定されていないとのこと)、人間の脳の情報量は12.5ギガバイト
・皮膚の温度センサ、熱さを感じるチャネルはトウガラシの成分、冷たさはミントの成分
・鼻はもっとも原始的な器官。人間は2万2000個しかない遺伝子情報のうち鼻に1000個も使っている。味覚は5、視覚は3。
・匂いだけは視床を経由しないので眠っていても嗅覚は働いている
・「エイリアン・アーム・シンドローム
・「ルビンの壷」がどちらに見えたか、MRIで測定できる、予想もできる
・脳は、情報の時間補正をおこなっているため、実は人間は常に未来を知覚している(脳内の時間制御感覚はかなりフレキシブル)
・空間は水平方向の歪みは知覚できるが、垂直方向は歪みを補正してしまう。

【第四章】
・脳はわずか1日400kcalで動いている(電力量で言えば20W)
・「ラングトンの蟻」(http://www.biwako.shiga-u.ac.jp/sensei/mnaka/ut/langton.html)これはすごい…。
・「ベキ則」=「自然界の鉄則」(なんらかのルールがある場合の出現頻度)
・「正規分布」=ランダムであることとほぼ等価