北村薫のベッキーさんシリーズ

街の灯 (文春文庫)

街の灯 (文春文庫)

玻璃の天 (文春文庫)

玻璃の天 (文春文庫)

直木賞受賞記念(ずいぶん前だけど)ということで、文庫化された「ベッキーさん」シリーズを読んでみました。北村薫さんを読むのは、円紫師匠シリーズ以来なので、ものすごく久々です。文章とか構成とかは、昔からものすごく巧い方なのだけれども、紡がれる物語はどうにも盛り上がりに欠けるという印象があるのと、主人公が教養にあふれすぎていて、少々嫌味に感じるという二つの理由から、個人的にはそんなに好きではありません。
さてさて、この「ベッキーさん」シリーズ、どうだったかというと、全くその印象を裏切らない、まさに「ザ・北村薫」と言える作品でした。
主人公の花村英子は士族出身で昭和初期の資産家令嬢という、ちょっと浮世離れした設定。その花村家の専属運転手が「ベッキーさん」こと別宮みつこで、この人は容姿端麗文武両道、宝塚の男役のようなスーパーレディーという輪をかけて現実離れした設定。ちょっと変わっているのは、円紫師匠シリーズが、主人公の「わたし」が遭遇した謎を円紫師匠がホームズのように解いてくれるという物語であったのに対し、この「ベッキーさん」シリーズは、ベッキーさんはあくまでワトソン役で、謎を解いてしまうのは主人公の英子であるという点。
なんか、それがちょっとイラっと来るんですよ。この英子、あの「うみねこのなく頃に散」に登場するエリカにそっくりで「英子はここにこれだけの事実があるだけで、これだけの推理が可能です」といかにも言いそうなキャラでして、あまりにも性格悪そうなので、思わずドン引きしてしまいました…。ベッキーさんはベッキーさんで、あまりにも隙が無さ過ぎて、それはそれで引いてしまいました。英子のバカ兄貴が一番親近感もてるなぁ、私は。
ストーリーは、暗号だの殺人だの失踪事件だのを解決するというミステリ短編集。文庫化二作しか読んでませんが、このノリで三作目ホントに直木賞?という気がしましたので、三作目は相当意外な展開が待ち受けてるのではないかと想像します。とりあえず、文庫になるまで待ちます。
ところでこの二作品なんですが、同じ文春文庫なのに、背表紙の色が違うんです。これは何故?これも何かの暗号?