東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

東京の都市風景を通して、東浩紀北田暁大現代社会の諸問題について対談する、という企画なのですが、結論から言うと失敗してます。自宅の引越しのために東京中の物件を比較検討し、東京という街をほぼリアルにつかんでいる東氏に対して、北田氏は「広告都市・東京」のような著作があるにもかかわらず、どうやら東京という都市の在り様を全然現状認識していないがために、東の問題提起に対して、揚げ足をとるような学者的な切りかえしばかりするのでしばしば話が脱線し、薄っぺらい議論に終わってしまったという印象でした。都市論・格差論・ファスト風土化問題と、かなり私にとって興味のあるテーマだったので、非常に残念です。
第一章は渋谷。かつて西武がつくりあげた広告都市の渋谷は今は無く、ただの街になってしまっているというもはや当たり前な議論が展開されます。
第二章は青葉台。東急がつくりあげたロハス的な共同体幻想(広告郊外)の欺瞞を明らかにしつつ、なぜこの街が国道16号線化(ジャスコ化)しないのかが分析されます。
第三章は足立区。この章だけ面白く読めました。格差社会下流側の代表選手として登場する足立区と荒川区では何が違うのか、経済格差をもう少し細かく見ることで、地政学的な条件による違いが見えてくることと、全国的にファスト風土化が進行する中で、年収格差と街の風景格差が表面上見えなくなるという指摘。これは私はきづいていなかったので素直に感心。
第四章は池袋。のはずがほとんど下北沢の再開発問題についての話に。結局あの街の再開発に反対する話って、そこの住民のことは考えていなくて、自分のメモリーの中にある幻想を残してほしいというエゴでしかなく、それは結局下北沢の街のテーマパーク化という話と何ら性格はかわらない、という東の主張に北田が反発。個人的には東の意見に賛成ではありますが、それによる結果があの美しくないファスト風土化というのは、イヤですという立場。評価C−