未来屋書店イオンレイクタウン店

chakichaki2008-10-01

レイクタウン特集の二店目は、未来屋書店です。未来屋について取り上げるのは初めてですね。実は店舗数でいうと150店舗以上あって、日本を代表する書店チェーンの一つではあるんですが、そんなにあるわりにはそうした印象が薄いです。「新文化」にまで「究極の金太郎飴」書店と呼ばれているぐらい、各店舗に個性的な特徴がないのが逆に未来屋書店の特徴となっています。
で、この越谷の店も、他の未来屋と何が違うのか?と聞かれると、いやまあ特に変わったところはないと思います、というのが結論でしょうか。強いてあげれば、お隣にあるタワーレコードと売場がつながっている、ぐらいでしょうか。でも中で通路がつながっていて単に壁がないだけだからなぁ。
それでも「タワレコとつながっている」というのはこの店にとっては大きな売りになっているようで、オープン記念で1000円以上購入した人には「未来屋書店×タワレコのコラボ文庫カバー」というとても珍しいものを特典で配っておりました。私もカバー欲しさに思わず1000円分購入。ちょっと得した気分です。
実際、この越谷の未来屋書店は、突出してスゴイとは思えませんが、確かに全体的な売場レベル在庫レベルは高く、レイアウトも非常によく考えられていて、充分に「いい店」の範疇に入ると思います。
ところで、未来屋書店の売場は、なぜここまで無個性なのでしょうか。それにはやはりイオンSCの書店である、ということが大きく関係しているような気がしています。未来屋書店の店舗デザインで唯一個性的だなと思うのは、壁面棚の上部の使い方なんですが、これもイオンのテナント物件が、どうしても天井高がとても高いために、必然的に生み出された個性なのではないかと思います。たとえば、児童書売場の壁面上部には、「ぐりとぐら」とかの大型絵本がきれいに展示されているのですが、これなんかは見習うべきとてもいい展開ではないかと思います。年間に何冊ぐらい売れるんでしょうか。
ただ、全体観で言うと未来屋書店の売場が個性に乏しいのは、否定できません。それはなぜなのでしょうか。大きく3つ理由を考えてみました。
未来屋書店が無個性な理由その1 差別化しなくても集客できる
世の中の多くの書店が、少しでも他の書店と差別化して懸命に集客しようと苦労している中、未来屋書店には、まったくその様子が見受けられません。イオン全体の集客パワーが非常に強力なので、その必要がないからです。これは、未来屋書店の大きなアドバンテージです。顧客の多くが「未来屋があるからイオンに来る」わけではなく、「イオンの中にあるから、たまたまそこにある未来屋に行く」という状態になっていると思われるのですが、それで何ら経営的に問題ないぐらいイオンの現在の集客力は、優れているわけです。逆にあらゆる年齢層を広範に集めるイオンの中にあっては、商品構成を個性化してターゲットをしぼりこむよりは、広く浅く品揃えをしてあらゆる客層のニーズにこたえるほうが大事となります。金太郎飴になるのは、むしろ必然で、あえて無個性にしているという風に考えたほうがよいかもしれません。
未来屋書店が無個性な理由その2 売上の最大値が決まってしまっている
これは、すべてをイオン全体の集客に依存しているがためにおこってしまう表裏一体の裏の部分。イオンのような大型SC内にある書店の月商は、およそSC全体の売上の0.17%になる、という法則があるそうです。SC全体の年商が100億円だとすると、中の書店は月商1700万ってことですね。ちなみにイオンレイクタウンの場合、年商計画は850億円なので、理論上では書店売上は月商1億4450万になりますが、規模的にちょっと特殊なイオンなので、テナントインしている書店全部の売上を足してもこれには届かないっぽいですが。ただまあ、このような法則があるということは、つまりイオン全体でどれだけ集客できるかが、中にある書店の客数と売上を決めてしまう、という事実を示しているわけで、個々の書店の営業努力や売場坪数の大小によって、売上が大きく左右されるわけではないということが言えるのです。マーケットに限界があるというのは、どこの書店でもある程度あてはまることではあるのですが、イオンの場合、それが明確なんですね。未来屋書店ではそこがわかっているがために、初めから売上の最大値を取りにいく売場を作るという方向性ではなく、ある程度決まってしまっている売上をいかにして効率的に稼ぎ出すか、ということが重要なテーマになってしまっているのではないかと想像しています。そうなると一番大切なのは効率です。効率を一番に求められる売場に個性は必要ないのです。

未来屋書店が無個性な理由その3 求められる効率レベルが高すぎる
未来屋書店が大変だなと思うのは、イオン本体から全然優遇されていないので、書店にとっては苛烈なテナント賃料を負担しなくてはならないということです。いまやディベロッパー事業で食っているイオンは、そのあたり容赦がありません。そこで未来屋書店は利益を出すために、究極の効率化をはかったのでした。とにかく人件費を節約するために、社員を減らします。そのため未来屋の店舗にいる店員さんがほぼ全員がパートさんです。店長はさすがに社員なのですが、一店舗に一人なんてもったいないから、一人当たり3店舗ぐらいの店長を兼任させています。もちろん仕入れとかまでは手が回らないので、業績の管理や在庫管理がメインの仕事になります。売場に関しては、発注や陳列については本部が大きな権限を持っていて、月一度の指示書にしたがって、パートさんがマニュアル通りの売場陳列をしてまわしています。発注もほとんど自動化されてるみたい。書店っぽいけれども、オペレーションの実態はコンビニに近い感じですね。そういう環境にある未来屋書店に個性的な売場を期待したところで無理でしょうし、作る気もないでしょう。未来屋書店の個性は、売場にではなく、むしろその血のにじむようなコンビニ化努力のおかげで営業利益率が3%という数字を達成しているという究極の運営効率に表れているんじゃないでしょうか。