明正堂書店アトレ上野店

chakichaki2005-01-16

今日は上野のアトレにある明正堂書店にやってまいりました。明正堂は上野エリアで7店舗でドミナントしている老舗書店ですが、何と言ってもアトレ上野店が群を抜いて有名なのは、ひとえにその仕掛け販売実績の凄さ、に尽きるでしょう。
本多孝好の「MISSING」や「世界の中心で愛をさけぶ」「慟哭」などをこの店のカリスマ書店員田中賢治氏が発掘して、ベストセラーにしたというのはもはや伝説となっていますが、さて私も半年ぶりに訪問してみました。
えー、この店の最大の特色は、その変な形です。物件自体が非常にいびつな形をしていて、そういう意味では梅田のブックファーストの1Fに似ています。ですが、この袋小路をうまーく処理してるんですね。4つも袋小路があるのですが、1つはコミック売場、1つは文芸書、1つはビジネス書、1つは江戸・下町コーナー、とそれぞれの売場が閉鎖された空間を逆にうまく生かして世界観を作っているのです。これを私はジャンルのワールド化と呼んでいます。書店にはワールド化できるジャンルとできないジャンルがあるのですが、それ理解した上でうまくレイアウトにはめこんでいますね。これは名人芸と言えるのではないでしょうか。江戸・下町コーナーなんて、今や名物売場ですから。
では入ってみましょう。入口は2つあって、通路がクロスするところに沿って作られています。左から入ると雑誌売場にあたります。ものすごい量の雑誌が綺麗に高さを揃えられて平積みされています。エンド平台の高さは床下15センチ。通常の前平台高も30センチですね。私も10センチという極端な店を作ったことがありますが、ターミナル型店舗の平台がめちゃくちゃ低いのは量を積まないといけないので鉄則です。

明正堂が偉いのは、その上ちゃんと高さを揃えているところですね。冊数の少ない雑誌の下には、電話帳4冊分ぐらいをテーピングテープで束ねたBOXを何個も積み上げて、高さを調整しています。ちなみにこれの正体は、トーハンの過去のロンセラリストでした。
入ってすぐ左側には明正堂の売りにもなっている江戸下町コーナーがあります。地図共販の話によると非常に売上がいいらしいです。東京人のバックナンバーが平台に並んでいる様を見て、やはり上野だなぁと感じ入れる売場です。
ビジネス売場に来ました。什器の並びが面白いですね。思わず縦に置いてしまいたいところを横に置いているのが素敵です。これを設計した人は分かってますね。
文芸文庫売場は、仕掛け販売が凄いです。えーっと、島田荘司の「火刑都市」を仕掛けてました。個人的には「異邦の騎士」が好きですけどね。ここも平台什器の高さにかなり工夫が見られます。このエリアの平台高は750ぐらいあって、かなり高めに作られています。その代わり平台の下側にかなりの量をストックできるように作ってあるんですね。ストック方式に苦心するターミナル店ならではの工夫です。このエリアには、在庫検索機が1台用意されています。すごかったのは、その隣に5スパンほどライトノベルの専用棚があったことでしょうか。しかもセレクションがちゃんとしてる。これまで見た中で最強のライノベ棚です。
コミック売場は狭いのですが、レベルは高めです。あれだけしか売場がないのに、みなもと太郎の「風雲児たちリイド社版を箱セットで売ってるのはさすがです。思わず買いそうになりましたよ。
この立地とこの客数で、奇跡的なまでにレベルの高い売場を実現している書店です。ブックガーデンばかり行ってる人はたまには改札降りて、明正堂に行ってみてください。本当にいい書店というのはこういう書店だということがわかることでしょう。
総合評価90点
あぁ、そうそう。なんで100点じゃないのか書くのを忘れておりました。それはですね、ここで仕掛け販売をしているのを読んで感心した本が一冊もない、という重大な事実があるからなのです。「MISSING」もセカチューも慟哭も、そんなにいい本でも何でもないだろー!みんな田中さんに騙されるなよー!