紀伊国屋書店札幌本店
今回は今年の4月にオープンした札幌の駅前にある紀伊国屋書店にやってまいりました。本店というだけあって、1300坪80万点の在庫を揃え、社員は26名というものすごい数字が並んでおります。出版社さんの評価も聞くところによると上々のようですが、さてどんな店なのでしょうか。
まず、道路側に面したお店の前面は総ガラス張りです。すげー。青い照明を効果的に使った高級かつ未来的な店構えですね。入り口は2箇所あるのですが、左側の入口から入ってみましょう。まずは壁面がすべて雑誌面陳什器というのはすごいインパクト。ステップスカルプチャーという名前らしいのですが、通常とは逆の傾斜がつけられており、雑誌は全部前に倒れ掛かったような陳列になっておるのです。お客さんは後ろから商品を取っていくという形になります。傾斜は上の棚の方がきつくなっている設計のようですね。驚いたのは壁面だけでなく島什器にまでこの方式が採用されていることでしょうか。
正直なところ小さな版型の陳列には使いにくそうで、個人的に採用しようとは思いませんが、いいかどうかは別として、確かに「新しい」感じは受けますな。
さて雑誌以外の1階の構成は話題の新刊・趣味実用・文芸書・コミック・文庫新書・地図となるのですが、面白いのが棚前平台が存在しないことです。これは新札幌にある旧型の紀伊国屋書店と比べると大きく違う点だと言えます。旧紀伊国屋書店の什器は什器高が1550あり、棚の前には木製の枠付きの箱みたいな平台があって3列単行本が積めるという形態だったのですが、この店には平台がありません。什器高も閣下の指示で50センチ低くなっています。
その代わりに重点商品の陳列が面陳列に置き換わりました。でもこれ微妙だなぁ・・・。コミックの棚に平台がないなんて売上とれないに決まってますからね。ちょとこの部分は早まった感があります。少なくとも1階で販売しているような回転率の高いジャンルについて言えば旧来型のほうが、理にかなっていて優秀な什器でした。かっこ悪いけど。
では2階に行ってみましょう。2階は、ビジネス・人文・理工・医書・語学・学参・アート・児童書という単価高そうな本が揃う大人のフロアとなっております。ギャラリーとかカフェとかもあって空間の使い方が異常に贅沢。美術館に来たような質感です。売場レベルは総じて高く、理工書の売上は大変好調なんだとか、さにあらん、という売場ですね。
さて、この紀伊国屋書店、どう評価すべきでしょうか。最大の評価ポイントはやはり内装の質感なのではないかと思われます。一番のポイントはやはり照明。この店では蛍光灯を直接目にすることはできません。店内の照明は天井から見本棚にいたるまで、すべてが間接照明に徹底されています。そして床は、通路が石のタイルで売場は木の床に統一されて高級感とわかりやすさを演出。さらに什器は大きなエリアごとに色彩を変え、デザインとゾーニングのわかりやすさを同居させています。
この札幌本店のデザイナーはシンガポールのケイ・ニー・タン氏。この人はシンガポールPAGEONEの社長実弟で、PAGEONEの店舗デザインをすべてやっている人。PAGEONEの紀伊国屋人脈?で今回デザインすることになったのでしょうか。この方のデザイン店舗については、また触れることもあろうかと思いますが、棚前平台がない、とか逆傾斜の雑誌什器とかは、外国のA&D書店っぽい発想から作られていますよね。したがってデザインは洗練されているし未来的ではありますが、海外の書店がそうであるように、ここも必要以上にハイソな店舗になってしまっている感があります。手書きPOPとかも許されなさそうな雰囲気だし、実際見かけませんでした。面白さより、かっこよさ。エレガントかつスタイリッシュであることが最優先された店です。ある意味この割り切り方は英断とも言える訳ですが、個人的には楽しめる店ではなかったかも。総合評価は85点ぐらいかな。